ウィキメディア財団選挙/単記移譲式投票
SecurePollでは、単記移譲式投票(Single Transferable Vote、STV)という選挙方式に対応しています。STVでは、有権者は当選してほしい候補者に対して優先順位をつけて投票します。SecurePollでは、Meek(ミーク)が実装した、ドループ式と呼ばれる計算方法を用います。
Meekの実装は、STV方式の選挙で最も人気があり、複数の組織や政府の選挙で使われています。以下の例では、一般的な概念を説明するために、より単純化された単記移譲式投票実装(スコットランド式単記移譲式投票)を使用しています。実際の実装で行われる方法のより正確な説明は、このページで確認できます。
STVを採用するウィキメディアの選挙
選挙の例
- 立候補者: ワニ、クマ、ネコ、イヌ
- 議席数:2名
- 投票者:7名
投票者 | ワニ | クマ | ネコ | イヌ |
---|---|---|---|---|
投票者 1 | - | 第3選択 | 第2選択 | 第1選択 |
投票者 2 | 第4選択 | 第2選択 | 第3選択 | 第1選択 |
投票者 3 | 第1選択 | 第3選択 | 第4選択 | 第2選択 |
投票者 4 | 第1選択 | 第2選択 | 第3選択 | 第4選択 |
投票者 5 | 第3希望 | 第1選択 | 第4選択 | 第2選択 |
投票者 6 | 第1選択 | 第2選択 | - | - |
投票者 7 | 第1選択 | 第4選択 | 第2選択 | 第3選択 |
ドループ最低得票数 = floor(有効投票総数/(議席数+1)) + 1 = floor(7/(2+1)) + 1 = 3
第1ラウンド
- ワニ: 4票 - 当選
- クマ: 1票 – 当選の可能性あり
- ネコ: 0票 – 落選した候補
- イヌ: 2票– 当選の可能性あり
第1ラウンドでは、すべての有権者の第1選択を有効とします。ワニはドループ最低得票数(quota)に達し、したがってワニの当選が宣言されます。
第2ラウンド
- ワニ: 当選
- クマ: 1 + 0.5 =1.5票
- ネコ: 0 + 0.25 = 0.25票 - 除外
- イヌ: 2 + 0.25 = 2.25票
ワニの余剰票 1 票は、投票者が指定した第2位の設定にしたがって再配布します。
ワニの票を見直すと – 投票者 2 名はクマ を2位に選び、1名はネコ、1 名はイヌを2位に選んでいます。
ワニの余剰票は比例配分します。クマは 0.5 票、ネコは0.25 票、犬も 0.25 票を上積みされます。
ドループ最低得票数を満たす候補者はいないため、得票数が最も少ない候補者(チャーリー)は除外され、その票は他の候補者に比例配分します。
第3ラウンド
- ワニ:当選
- クマ:1 + 0.5 + 0 =1.5票 - 落選第2位
- ネコ:落選
- イヌ:2 + 0.25 + 0.25 = 2.5票
ネコは得票数が最低のため落選。投票者 7 番は投票プロフィールにワニに次いでイヌと示しており(当選決定済み)、猫は落選決定済みのため、ネコの票は全てイヌに移ります。
ドループ最低得票数を満たす候補者はいないため、ここでも得票数が最も少ない候補者は落選。したがってクマは落選です。
第4ラウンド
- ワニ: 当選
- クマ: 落選
- ネコ: 落選
- イヌ: 2 + 0.25 + 0.25 +1.5 = 3.75票 - 当選第2位
クマは得票数が最低のため落選。投票者 4 番と同 5 番は投票プロフィールにクマに次いでイヌと示しており、この2名の票はイヌに加算されますが、投票者 6 はワニ、クマ以外の候補者を指名しなかったため(どちらも当落決定済み)、投票の4分の1は無効になります。
デイブは基数を超える3.75票に達したため、当選を宣言されました。
結果
結論として、当選候補2名、落選した候補は2名です。
- 当選した候補者:ワニとイヌ
- 落選:クマとネコ
注意事項
- いずれかの集計回で誰もドループ最低得票数を満たさなかった場合、最低得票数の候補を落選とし、その得票は投票者の選択順の順位にしたがって、他の候補者比例配分します。
- もし残りの議席が1席となり、2名以上の候補者の得票数が同数であった場合は、システムは介入を認め、選挙管理者もしくは選挙管理員会に当落を決めます。
- ご留意いただく点として、上記の例は簡略してあります。実際の算出では、ドループ最低得票数は集計回ごとに再計算されます。
- 中間ラウンドで2名以上の候補者が同点得票であった場合はこちらの書類にまとめた「ショートカット排除ルール」に従います。この方式により、勝てないことが数学により保証された候補者を排除できます。すなわち未処理の余剰票すべてをどちらかの候補者に割り当てても、その人の得票が次点の候補者の票を下回る場合に証明が成り立ちます。これは同点の候補者を無作為に排除するよりも、より公平に排除を決める方法と考えられます。より大規模な選挙の例。OpaVoteあるいはOpenSTV は同点の場合に疑似ランダム排除を採用する点にご留意ください。したがって同点の場合、私たちの集計結果とは一致しない場合があります。
- 特定の投票者がすでに投票用の votewiki にログイン済みの場合は、ホームウィキから投票サーバに移動した時にエラー表示が出るかもしれません。その場合はいったんホームウィキに戻り、再度、同じ手順を踏むと解決することがあります。これは既知のバグとして修正作業が進行中です。
- 注記:集計の段階では集計ページに高精度の数字を正確に表示しない場合があります。バックエンドで使用する PHP は、極めて高精度に対応しています。これをインターフェースで表現するのは簡単ではありません。ただしプロセスをエンドユーザーに明確に示さないまま、排除/選出に影響する可能性があります。たとえば候補者 A の第1回獲得が86.00000000003 票、候補者 B が同じく 86.0000000004 票であった場合、表示は両者とも「86」票獲得ではあっても、完全な数字を比較すると、候補者 A の得票数は候補者 B を下回ることから候補者 A は排除されます。