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はじめに
ウィキメディア財団の募金活動年次報告書をお届けできることを嬉しく思います。世界トップ10に入るウェブサイト「ウィキペディア」の運用など、数々の画期的なプロジェクトの費用の捻出方法を皆様に共有するための貴重な機会だからです。
ウィキペディア財団は、非営利組織の募金活動として稀に見る手法をとっています。 幸運なことに、約30カ国にまたぐ700万人以上の方から、平均15ドルのご支援をいただきました。 私たちのミッションを支援してくださった寄付者の皆様に心から感謝いたします。
募金活動の戦略を新たに考える際、私たちはウィキメディアという活動の本来のビジョンを決して見失いません:
地球上のすべての人が、人類のありとあらゆる知識を自由に共有できる世界を叶えたい。
私たちは、知識はすべての人のためのものだと信じてます。この信念は、私たちの募金活動の包括的な手法にも繋がっています。ウィキペディアは学生のため、企業幹部のため、消防士のため、またアーティストのためにあります。 金額の大小に関わらず、ウィキペディアに寄付してくださる方には一つの共通点があります。全員が、ウィキペディアを、いつでも使える便利なものだと思っていることです。
ご支援いただきありがとうございます。
数字でみる一年
大陸別の寄付金総額
募金メッセージの翻訳や、各地域へのローカライズについてご意見・ご感想をお持ちの方は、ウィキペディアの募金活動 についてのページからご連絡ください。
寄付金総額の内訳
寄付金総額:1億1,290万 米ドル(寄付者数:700万人以上)
本年度は収入増加
平均寄付金額は0.25 米ドル減少
数字でみる一年:英語圏での募金活動
英語圏での募金活動は、6か国(オーストラリア、カナダ、アイルランド、ニュージーランド、英国、米国)にまたいで行われます。 寄付者へのメール配信と、ウィキペディアのサイト上で寄付を呼びかける「バナー」表示を実施しました。 通常、この募金活動は、ウィキメディア財団の年間収入の50%をもたらします。
一年の特定時期に収入が集中しないよう、2017年からは募金活動の試験期間を延ばし、会計年度の初期に英語のバナーを表示するようになりました。 財務リスクの軽減、寄付者の募金体験の改善、また寄付者の幅を広げることが目的でした。 2018〜2019 会計年度も同じ戦略を継続しました。
オンライン募金活動のバナーと電子メール(英語圏):
2018〜2019 会計年度の種類別 収入内訳
今年、モバイル・バナーからの寄付比率は、6パーセントポイント増加しました。 デスクトップ・バナーからの寄付比率は、5.5パーセントポイント減少しました。 電子メールからの寄付比率に変化は見られませんでした。
オンラインバナーによる募金活動
ウィキペディアのページビューとインプレッション数においては、デスクトップからモバイルへの移行が続いています。 ただ、興味深いことに、寄付率は今もなおデスクトップがモバイルの2倍を誇っています。
社会的証明に関する質問への対応
オンライン募金活動チームは、寄付をお願いするメッセージ内の否定的な社会的証明(ソーシャル・プルーフ)の使用について質問やコメントをよく受けます。 社会的証明は、人間の「他者の意見や行動に従おうとする」心理を指します。例えば、同じものを買ったり同じことをしている集団を目にした人は、その集団の後に習う傾向が強まるのです。
いっぽう、私たちの募金活動バナーで最も印象的なフレーズは、逆のアプローチをとってます。
“... 寄付をしてくださるのは、全体の1%に過ぎません。
および/または
“... 99%の方はこのメッセージを無視するでしょう。
オンライン募金活動チームは、上記のような否定的な社会的証明を取り除く試みを繰り返してきました。 その度に、寄付率は低下を見せました。 そこで昨年、この分野の専門家らに声をかけ、この結果が一貫して出続ける理由を探ってもらいました。 非営利組織や募金という文脈において、社会的証明のルールが当てはまらない何らかの理由があるのでしょうか? 募金活動と非営利組織ゆえの社会的証明の働きについて、何らかの結論に辿りつくことを期待して、今後もさまざまな試みを続けていくつもりです。
モバイル・バナー(大サイズ)における変更
文字数が多いモバイル用の大きなバナーが、非常に効果的であることに驚いています。 文字数を削ることでメッセージを短くする試みを繰り返しましたが、その都度寄付率は低下を見せました。 今年は、「バナーをより小さく控えめにしてほしい」というコミュニティからの要望があったため、文字数を減らしたり、デザインの一部を変更・削除したりすることでバナーの効率化を目指しました。 変更することによってバナーの寄付率は低下しましたが、それが誰にとっても一番良い策だろうと思ったのです。 コミュニティと手を合わせ、私たちはウィキメディア財団のオンライン募金活動のあり方、そしてそれを読者や寄付者にどう伝えるべきかを考えました。
今後に向けて:継続寄付
来年は、重要で持続可能な収入源である継続寄付の増加に注力することを楽しみにしています。 まだ試験運用を始めたばかりですが、近い将来、皆様に有望な結果を共有できることを待ち望んでいます。
電子メールによる募金活動
ウィキメディア財団の電子メールを使った募金活動は、順調に伸び続けています。 メールによる募金活動の収入は前会計年度比較で19%増加し、全体の寄付金額も25%の増加を見せました。
私たちチームにとって、寄付者とのコミュニケーションを重ねていくことは大切ですが、同時にメール受信箱を埋め尽くさない配慮も忘れてはいません。 そのため、寄付者お1人あたりへのメール配信は、年間最大3通までというルールを徹底してきました。 従来、寄付に至る率が最も低いのは、2通目(ここに表示されている"Eメール 2")のメールでした。1通目の目新しさはなく、かといって3通目のような緊急性に欠けていたためです。そこで、私たちは2通目のメールの寄付率の改善に力を入れました。
継続寄付による貢献を称えるために始めた、寄付した年ごとにバッジが獲得できる仕組みの表示例をご覧ください。 このコピー(文言)とデザイン要素によって、複数の国と言語で、メール1通あたりの寄付金額が8パーセント改善しました。 バッジが、ウィキペディアの寄付者であることを誇りに思う気持ちを強化したようです。 引き続き、バッジの名称、内容、デザインを試し続けており、来年もこれらの試みを寄付者の皆様と共有することを心待ちにしています。
今後に向けて:寄付者とのリレーション強化
独自の試験プログラムを活用することで、私たちは寄付者について多くのことを学ぶことができます。その結果を踏まえて、それぞれの人に響くようにメッセージを最適化できるのです。 今後は、電子メールのメッセージをさらに試しカスタマイズすることで、既存および見込み寄付者を含む幅広い人たちにとって、より意義のある内容にしていく予定です。 また寄付者との長期的関係を育み、ウィキペディアの活動をより多くの人に知ってもらえるよう、チームを増員しました。 ウィキペディアのコミュニティにより多くの寄付者を迎え入れるためのツールとして、今後も電子メールを活用していくことを楽しみにしています。
大型寄付
2018〜2019 会計年度は、1,600以上の個人や団体が、1,000米ドル以上の大型寄付を寄せてくださいました。 その他にも、大型寄付に該当するドナー・アドバイズド・ファンドなどの方法で、何千もの方々に支援していただきました。 大型寄付の総額 1,410万 米ドルは、Google.org(グーグル・ドット・オーグ)の110万 米ドルと、ブリン・ウォジツキ財団の100万 米ドルを含みます。[4] 今年、ウィキメディア・リサーチ・チームを支援するシーゲル・ファミリー基金の3年間の助成金補助が開始しました。また、ウィキメディア・コモンズ・プロジェクトの構造化されたデータ(ウィキメディア・コモンズで使用可能なフリーライセンスの写真・音声・動画の共有、アクセス、再利用を容易にするもの)を支援していた、アルフレッド・スローン財団の3年間の助成金補助が終了しました。
ウィキメディア財団の収入源を多様化する大型寄付は、大型寄付者が私たちのミッションに大きなインパクトをもたらす機会でもあります。 大型寄付者の名前の多くは、寄付者のページで確認することができます。
マッチングギフト
昨年、企業の社会貢献プログラムを通じて31,500件以上の寄付が寄せられました。 マッチングギフトと給与控除プログラムでは、従業員によるウィキメディア財団への個人的な寄付を雇用主がマッチングさせることで、元の寄付金額を数倍にすることができます。
マッチングギフトによる寄付金総額は、138万839 米ドルでした。これには、グーグル(Google)の44万8,279 米ドル、アップル(Apple)の20万7,542 米ドル、マイクロソフト(Microsoft)の16万1,649 米ドルが含まれます。 2018〜2019 会計年度、このプログラムによる収入は36.85パーセント増加しました。
基金
2016年1月に、私たちはウィキペディアとその他の自由な知識を追求するプロジェクトを遂行するための永続的な資金源として、ウィキメディア基金を起ち上げました。 私たちのミッションは、知識へのアクセスを長期的に確保することです。
10年間で1億 米ドルという当初の目標に対して、すでに4,100万 米ドルを調達することができました。 予定より早く、1億 米ドルの目標を達成できる見込みです。前会計年度は、大型寄付と計画的寄付(寄贈、遺言、信託など)、基金諮問委員会関連、および年次キャンペーンの寄付者による寄付の組み合わせで、総額1,460万 米ドルが集まりました。 寄贈者の名前の多くは、寄付者のページで確認することができます。
また、計画的寄付の強固なプログラムを築くため、ウィキペディアへの遺贈を予定する寄付者を称える方法として、ウィキペディア・レガシー・ソサエティーなどを起ち上げました。 計画的寄付では、一般的に遺贈や遺産相続計画などを通じて、将来の寄付の誓約を集めることができます。
昨年、自由な知識の未来を支援する手段として計画的寄付に興味を持った、1万人以上の寄付者から関心が寄せられました。 計画的寄付は、基金を長期的に成長、維持していくための機会をもたらします。 私たちは、今後も計画的寄付を育み、その拡大に取り組んでいきます。
支援者からのメッセージ
「私の好奇心にたくさんの喜びをもたらしてくれます!!」
「資料や情報が必要なときにいつでも頼れるようにしてくれてありがとう。 皆さんのハードワークに感謝します!」
「昼夜を問わず、ボタンひとつで無料で学べることにとても感謝しています。 私は58歳ですが、そんなことが可能な世界を今でも奇跡のように感じています。」
「ウィキペディアは世界にとって学びの膨大な情報源であり、その意義は日に日に増しています。 人類史上、これに匹敵するものはありません。 偏りのないファクト(事実)を参照する基準として、ウィキペディアはかつてなく重要性を増しています。」
「ウィキペディアは、客観性を追求し、異なる視点が存在する分野を素直に認識する上で賞賛に値する働きをしてくれます。」
「議論を醸す話題についてもオープンな姿勢を曲げず、またオピニオンではなくファクトだけに徹している点も好きです。」
「あなたなしに、私たちは存在しません。 誰もが知識にアクセスできるように努力を重ねる、匿名を含むすべての編集者に感謝します。 ウィキペディアは驚くべき偉業であり、あなたたちは誇りに思うべきです。」
「自分らしくいてください。 ありのままでいてください。 無料で、広告を掲載することなくいてください。 読者のデータを売らないでください。 あなたの成長を何年も見続けてきて、あなたを誇りに思っています。 ありがとう。 皆さん一人ひとりに感謝しています!」
「ウィキペディアは本当に素晴らしいサイトです ... 情報が即時に必要なときに役に立ってくれました。 また、新しいことをただ楽しく学ぶための素晴らしい方法でもあります。 ありがとうございます。」
「知識と文化は、人類の進歩における基盤です。 それなしに、相互尊重と平和は不可能です。 人類は、これをもっと必要としています。これからも、その仕事ぶりで世界をより良くし続けてください。」
このレポートについて
最後までレポートをお読みいただきありがとうございます。 このレポートについてのご意見・ご感想は、ウェブサイトをご覧ください 。ウィキメディア財団の募金活動に関する情報を喜んで共有いたします。皆様からのフィードバックを心よりお待ちしております。 ご意見・ご質問には、できる限りお答えいたします。
- ↑ 大陸別の寄付金総額は、匿名やキャンセルされた寄付、またオフラインの寄付を除外することがあります。
- ↑ 「その他」には、ウィキペディアのサイドバー、ウィキメディア財団の「その他の方法」ページ、ウィキペディアのアプリ、各種ソーシャルメディア、小切手 、匿名や自発的な寄付(例: 「donate.wikimedia.org」に直接アクセス)や、オフラインの寄付が含まれます。
- ↑ 前年度までの数字は、キャンセルされた寄付や一部のオフライン寄付を除外していることがあります。 この募金活動報告書に記載されている金額は、米国の一般会計原則に準拠しておらず、当財団の監査報告書およびアメリカ合衆国内国歳入庁のフォーム990の収入とは異なります。
- ↑ 大型寄付による寄付金総額 1,410万 米ドルは、1,000 米ドル以下でも大型寄付に該当するドナー・アドバイズド・ファンドなどを含んだ場合の金額です。